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重要文化財である旧図書館のすぐ傍ら。赤煉瓦と花崗岩のコントラストに目を奪われがちな一角に、静かに佇む二つのモニュメントがあります。一つは、朝倉文夫の手による彫像「平和来(へいわきたる)」です。戦没した塾員の霊を慰めるべく寄贈されたこの像は、朝倉らしい瑞々(みずみず)しい裸体表現により、若き命の輝きを今に留めています。台座には、戦時下に塾長を務め、自らも愛息を戦禍で亡くした小泉信三の筆による「丘の上の平和なる日々に征きて還らぬ人々を思ふ」という一文が刻まれています。失われた塾生や愛息の面影を、この青年の姿が永遠に留めているかのようです。この芸術的な「記憶」に寄り添うように、もう一つの「記録」を表す碑が並んでいます。慶應義塾が戦後、塾生一人ひとりの軍歴や最期の地を丹念に調査し、積み重ねてきた緻密なデータの結実の姿です。書架に並ぶ台帳を模したその姿は「還らざる学友の碑」と呼ばれています。慶應義塾の伝統を象徴する建築美のすぐそばには、芸術による「記憶」と、学問に徹した「記録」が交差する空間があります。