実はポストモダニズム建築であり各所に直線を基調とし...
名前 |
「枯山水庭園(時空No.3)」多田美波 |
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ジャンル |
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住所 |
〒812-0011 福岡県福岡市博多区博多駅前2丁目5−17 |
評価 |
4.0 |
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損保ジャパン福岡ビル(旧安田火災海上福岡ビル)は昭和を代表する建築家であった黒川紀章氏(1934-2007)による設計で1985年に完成、アルミ色の無機質なカーテンウォールに覆われた外観は一見無装飾なモダニズム建築のように見えるが、実はポストモダニズム建築であり各所に直線を基調とした日本的な装飾が配されている。このビルの建物西側に設けられた最大の特徴でもある白砂のモダン枯山水、この庭は昭和を代表する女流造形作家であった多田美波女史(1924-2014)の作品です。庭は人の腰ほどの高さの硬質ガラスの塀ごしに公道に面し、24時間だれでも見ることができる「パブリックガーデン」となっており、この庭はビルに沿った横長の敷地全面に白砂を敷き詰め、向かって左には、いかにも多田美波らしいステンレスの円錐形の現代彫刻が据えられミニマムな空間構成とし、対象的に右は複雑な構成をとり、庭の入口としてステンレスの方形の門を設け、その門をくぐって庭に入り石段をおりると、切石を組み合わせた敷石(延段)が庭を斜めに横切り向こう側のビルのドアへと続いている。この敷石は京都・桂離宮「古書院」御輿寄せ前の敷石のパターンを左右逆に反転させたものである。見た瞬間に「ハッ!」としたあとに違和感を覚え自前の資料でチェックしてその仕掛けに思わず唸った方もいらっしゃることと思う。反転させられた過去の伝統芸術とミニマムなステンレスの現代彫刻の対比がはたして何を表すのか?は鑑賞者自身が考えてほしい。さらに敷石の右側には小さな石垣が築かれている。2021年の時点ではその壇上には何もないが、かってはそこに一本のケヤキが緑の葉を茂らせ、この庭の三つめの主な構成要素であった。また横長の庭の背景は全面ガラス張りであるが、その横長のガラス上部には伝統的な日本建築である寝殿造りの蔀戸(しとみど)を模した格子状の金属装飾が設けられ石庭と響き合っており、まさに日本ならではの空間を創出している。※あわせて巡れる近隣の庭園・・・「楽水園」(令和三年3月12日)